ドゥドゥク奏者∴樽見 ヤスタカ(Yas.Tarumi)

アルメニア共和国の民族楽器「ドゥドゥク(Duduk)」の国内わずかな奏者であり、シンセサイザーを用いた作編曲家。首都圏中心に自主企画イベント開催、コンサートライブ出演、地域振興イベント、企業様とのタイアップ企画などで音楽を活かす活動を行っています。

記事一覧(96)

レッスン -東へ西へ-

この数年、様々な個所にお住まいの方からドゥドゥクについてお問合せを頂くようになりました。樽見ヤスタカは千葉県を拠点にしていますので、1都3県におられる方へは出来るだけ、お近くのところまで伺っています。日本ではドゥドゥクはまだまだ楽器店様でも取り扱われない楽器。「体験してみたい。」「まず楽器を見てみたい。」「生で聴くとどんな風に聴こえるのか確認したい」…皆様からのご要望は色々なお声がありますし、可能な限りお応えしたいと東へ西へお伺いしています。普段の樽見ヤスタカ自身の生活動線とは異なる場所にどんどん縁が出来ていくようで、楽しさも感じています。昨年からよく通っている箇所の一つ。津田沼駅。改札を出て、駅舎の屋根から空が開けた時の雰囲気も変わってないなぁ。とってもとても遠い昔、まだ樽見が高校生だった頃。下校ついでに最寄り駅で降りずにそのまま津田沼駅で下車。駅近くに当時あった楽器店様に足繁く通った記憶があります。楽器店に通ったといっても、併設の音楽教室に通学した等でもなく、店員様と親しく話していたという訳でもなく。楽器が沢山置いてある、そういう雰囲気がただただ単に好きだったから長居していました。(面倒な人だったに違いありません💦)一つひとつ思い出が蘇ってくるようです。

【 お世話になりました。 -Homeland- 】

昨年末に力尽きた、17年前から使ってきたリード。樽見が人生で初めて買ったドゥドゥク の付属品であり、どの演奏会場でも携え、吹き、音も録ってきた1本です。自身で使うリード群に関しては「壊してしまった経験」も「壊された経験」も、どちらも樽見にはありますが、「使い続ける中で本当に力尽きるのを見る」のは今時期が初めてで、とても複雑な色合いです。「 ”力尽きたリードはどんな状態か?” を学べたし、“ドゥドゥクのリードは何年もつの?”についても、樽見としての見解を説明できるようになった。」と述べるべきところですが(これも確実に本音)、内心、気持ちの整理には時間を要しました。初めての この1本が 超絶吹きやすかったから17年前の樽見も”ドゥドゥク やれそう”って思えたのです。2本目、3本目…とドゥドゥクを買い揃えても、届くのは最初の1本目とは似つかない吹き難いリードばかりだったから(当時はどこをどうやっても全く発音不可なリード等も多かったのです。)「なぜ ”吹きやすさ” が、これほど違うのか?」を考えるとか、削る行動を試みる機会が出来たのです。そして、この1本の音色を気に入っていました。吹いていられる基準のようなものでした。“一番初めに持つ楽器” これって超絶、大事です。持った後、自分にどんな気持ちが起こる可能性があるのか、左右し得る。全く音を出せないドゥドゥクが最初の1本として届いていたら樽見はとっくに匙を投げていました。1stドゥドゥク は自分自身のHomelandの一つです。昨秋に制作した カヴァーアルバム” Duduk Blue ”。日本、アルメニア、世界の歌を様々録った中、収録曲の最後に ” Homeland ” という1曲を置きました。慎重にこの1本のリードの調子を整え続け、ようやくHomelandを録れる状態にしてRec。明るさも陰りも含む、Japanese Dudukを録れた実感をよく覚えています。その制作を終えてしばらくの後、この1本のリードはほんとうに、すっかりと 音を出せなくなりました。長旅を終えたのだなと思っています。

【動画公開】C管 ドゥドゥクは持ちやすいサイズが強み。

ドゥドゥク提供時に大事にしていること

樽見はご購入者の方へドゥドゥクを送る前にリードの検品・調整を必ず行います。検品・調整という一言の中身は様々。・その方にとって吹きやすいリードか・その一個のベストな状態はどんな時か・どこまで削ると吹きやすくなるか・どこまで削ると音色が崩れてしまうか・どちらを上にして付ければ良いか目印付け・そもそも音程が揃うリードか判断・調整直後 vs 1〜2日経過後 の変化幅(※削らずとも、吹きやすいリードも あります。念のため。)具体的に書き出すならば、樽見は上記は必ず診ます。リードを余分に取り寄せる上、この調整作業も必ず行った上で、本国からの直接購入額と同額で提供出来るようにしています。力不足は常に感じますが、やろうと思った方々に喜んで欲しいし、やれるかもって思えてほしい。基本、そのモチベだけです。逆に言うと、これだけやらなければならないのがドゥドゥクの提供です。入念なチェックも無しに、提供者が「個体差を出来るだけ均一にする」のは不可能です。正直に言ってしまうと、アルメニアの製作界は購入者様に対し隅々と何から何まで迎合ではありません。そう思いは続けていましたが、昨年になってからでしょうか。"こんなリードが欲しいんです"という、購入者様のご要望や理想像が少し変わってきました。それはつまり、樽見視点で行っていた調整作業の量を控えめにした状態のもの。あるいは入荷したままの状態のリードを吹きたい、そんなご要望です。樽見は、その声を頂き始めた頃、あぁ、それでもいいんだな、と。ドゥドゥクがそれだけ多くの方に知られてきたということでもあります。「今までやってきたこと」だとか、自信が崩れ去るだとか、そういう感覚は全くありませんでした。逆に、肩の力が抜ける思いがしました。それがきっかけで、自身でメイン使用しているリードも今まで使い慣れたもの以外の個体も自然とトライしやすくなり。自分自身で出す音色も変わり始めている時期に今、あります。ドゥドゥクと人を通して次の段階を感じているところです。

ドゥドゥクの販売活動も5年半が経ちました。

お渡しする楽器の納品前の手入れ作業が好きです。ドゥドゥクの販売活動も5年半が経ちました。 ご興味がある方へ、ただお買い物相談に乗ることしか出来なかった半年間に比べ、それ以降のこの5年半は貴重な機会でした。2022年の年末頃でしたか、確かSNS上で当時の合計販売本数が20本に到達したお知らせを書いた事がありました。その後2023年中は16本のドゥドゥクをお渡し出来、今月も3本、巣立ちが決定。そろそろ40本目へとなるやもしれないという段階に今、あります。メーカーからのオファーは突然の出来事でした。いきなり「あなたに話があります。」その一文だけのメッセンジャーのメールが届いた2018年。普段であれば、"怪しいメール"と判断、反射的に無視か報告を決め込むところでしたが、取り扱っている自社製ドゥドゥクや付属品のケースの丁寧な造り。それが写真からでもありありと見て分かった。自分自身でも興味が沸いた。気になった。元々、難しいことが考えられない樽見ですから、きっかけといえばそんなところでしかありません。その後、少なからぬご縁が重なり、(Y先生、本当にありがとうございます。)実物サンプルだけでなく、その他の条件もしっかりと相互確認し合うことが出来たから、販売活動を始められています。偶然だったろうなと今でもよく思います。日本に住むどなたかが既にメーカーへの熱烈フォローをし続けていれば、その方がデモンストレーターとして活動されていたかもしれません。販売を通して新たな会話があること、お買上に至る様々な契機があったこと、今、出来る時に出来ることがあること。それらを噛み締めて、一本一本調整と検品をしてます。